クラウドサービス

Filestore

複数の VM や GKE から同じファイルを同時に読み書きできる共有ストレージ。NFSv3/NFSv4.1 対応でマウントするだけのフルマネージド Filestore。AWS の Amazon EFS に相当。

中級信頼性パフォーマンス効率コスト最適化
最終更新: 2026-06-14公式ドキュメント
3つの要点
TL;DR
  1. 複数の VM やコンテナから同時マウントできる NFS の共有ファイルシステム。
  2. Zonal / Regional は容量と性能を個別に変更可能。Basic は容量拡張のみ。
  3. ティア・プロトコル・接続方式で可用性、認証、性能、費用が大きく変わる。

解決する課題

  • 複数の VM・コンテナで同じファイルを共有したい(Web コンテンツ・アップロード・HPC の中間データ等)
  • NFS サーバーを自前で構築・運用したくない(OS パッチ・冗長化・バックアップを任せたい)
  • GKE の Pod から ReadWriteMany な永続ボリュームを使いたい
  • レンダリング・ゲノム解析・EDA などで高スループット・低レイテンシな共有領域が欲しい

主要概念と用語

  • インスタンス: Filestore の単位。1 つの NFS エンドポイント(IP アドレス)を持つ
  • サービスティア: 主力は ZONALREGIONAL。GKE の複数共有には ENTERPRISE、互換用途には従来の BASIC_HDD / BASIC_SSD
  • ファイル共有(share): インスタンス上のエクスポート単位。クライアントは IP:/<share名> でマウントする
  • 容量とカスタム性能: 容量は明示指定する。Zonal / Regional は範囲内で拡大・縮小でき、IOPS を容量と独立して設定可能。Basic は拡張のみ
  • 接続方式: Direct Peering、Private Services Access、Private Service Connect のいずれかで VPC から内部到達する
  • スナップショット / バックアップ: 特定時点のコピー。バックアップは別リージョンへの復元にも使える

仕様・制限・クォータ

  • NFSv3 は全ティア、NFSv4.1 は Zonal / Regional / Enterprise で利用可能。NFSv4.1 は Kerberos による認証・完全性・転送時暗号化とファイル ACL に対応
  • 作成時に容量を指定。ティアごとに最小・最大容量と増減の刻みが決まっている
    • BASIC(HDD/SSD): 1 TiB 〜 数十 TiB 規模
    • ZONAL: 〜100 TiB 規模、ENTERPRISE: 〜10 TiB 規模(要件に応じた高容量・高スループット。最小・最大の最新値は公式参照)
  • 可用性の範囲はティア依存:BASIC / ZONAL は単一ゾーン、REGIONAL / ENTERPRISE はリージョン内の複数ゾーンへ冗長化
  • Zonal / Regional のカスタム性能は、固定 IOPS または TiB あたり IOPS を容量と独立して購入できる。従来 Basic の性能特性とは分けて考える
  • インスタンスは VPC 内の内部 IP で公開され、インターネットから直接はマウントできない
  • プロジェクト/リージョンごとに容量・インスタンス数のクォータがあり、引き上げ申請が可能

内部の仕組み

Filestore は Google が運用するマネージドな NFS サービスで、インスタンスの内部エンドポイントを VM や GKE ノードからマウントします。同じ共有を複数クライアントが同時に読み書きできるため、アプリケーション側ではファイルロック、UID/GID、同時更新の扱いまで設計します。

  • 接続は Direct Peering、Private Services AccessPrivate Service Connect から選び、同じ VPC または接続可能なネットワークから内部到達する
  • REGIONAL / ENTERPRISE ティアは、リージョン内の複数ゾーンにデータを冗長化し、ゾーン障害に耐える
  • ENTERPRISE は GKE 向けに複数共有(マルチシェア)を 1 インスタンスに同居させ、多数の小さな PV を効率的に割り当てられる

横にスクロール

VMとGKE PodがVPC内からNFSv3またはNFSv4.1でFilestoreへ接続し、ZonalまたはRegionalへデータを配置し、容量・IOPS・スナップショット・バックアップ・複製を管理する構成
クライアントはVPC内の接続経路を通ってNFS共有をマウントします。ティアが障害範囲を決め、Zonal / Regional では容量とIOPSを分離して調整できます。復旧経路はスナップショット、バックアップ、利用可能な場合の非同期複製を使い分けます。
EFSと異なり容量・性能を明示的に管理する

Filestore は容量をプロビジョニングします。Zonal / Regional は対応範囲内で容量を増減できますが、自動で無制限に伸びる仕組みではありません。カスタム性能を有効化した場合は、容量だけでなく購入 IOPS とクライアント並列度も監視します。

設計パターン / ベストプラクティス

  • GKE の共有ボリューム: CSI ドライバ経由で ReadWriteMany の PersistentVolume として利用。多数 Pod が必要なら ENTERPRISE のマルチシェアで PV を効率配分
  • HPC / レンダリング: 高スループットが要るなら ZONAL。必要容量と IOPS を別々に見積もり、複数クライアントで性能試験する
  • 可用性要件で選ぶ: ゾーン障害に耐える必要があれば REGIONAL / ENTERPRISE、コスト最優先で単発用途なら BASIC_HDD
  • 同一ゾーン配置: レイテンシ最小化のため、マウントするクライアントと Filestore を同じゾーン(BASIC/ZONAL)に置く
  • バックアップの自動化: スナップショット/バックアップをスケジュール化し、誤削除・障害に備える

運用・監視

  • Cloud Monitoring でメトリクスを監視。file.googleapis.com/nfs/server/used_bytes_percent(使用率)、read_ops_countwrite_ops_countread_bytes_countwrite_bytes_count などで容量と I/O を把握
  • 使用率と購入 IOPS の消費を別々に監視し、容量変更またはカスタム性能変更を計画する
  • マウントできないときは、ファイアウォールルール、接続方式、割り当て IP、クライアントの NFS パッケージ、NFSv4.1 の認証設定を確認
  • スナップショット/バックアップの取得状況とリストア手順を定期的に検証

コスト

課金は主にプロビジョニング済み容量(GiB)× ティア単価 × 時間で決まります。EFS の「使った分だけ」とは異なり、確保した容量に対して課金される点が重要です。

ティア可用性 / 性能向いている用途
BASIC_HDD(旧 Standard)単一ゾーン・HDD・低単価大容量で性能要件が低い共有・アーカイブ寄り
BASIC_SSD(旧 Premium)単一ゾーン・SSD・中性能一般的なファイル共有・Web コンテンツ
ZONAL単一ゾーン・高スループットHPC/レンダリング等の高性能な単発ワークロード
REGIONAL / ENTERPRISE複数ゾーン冗長・高可用本番の重要データ・GKE のマルチシェア
コスト最適化のコツ

容量と購入 IOPS を分けて確認します。カスタム性能では、容量だけ増やしても購入 IOPS が不足していれば性能は上がりません。 必要スループットと容量の両面から最小構成を見積もり、不要なバックアップは保持期間で整理しましょう。

セキュリティ

  • 接続は VPC 内の内部 IP に限定され、インターネットへは公開されない
  • 保存時の暗号化は既定で有効CMEK(顧客管理鍵) で Cloud KMS の自前鍵も利用可能
  • ファイアウォールルールで NFS(2049 等)の到達元を必要なサブネット/タグに絞る
  • IAM で Filestore インスタンスの作成・削除・スケール等の管理操作権限を制御する
  • NFS のファイルアクセス権は UID/GID(POSIX) ベース。クライアント側の uid/gid 設計を揃える
アンチパターン

ファイアウォールで NFS ポート(2049 等)を広く開放し、想定外のサブネットからマウント可能にするのは NG。 NFSv3 は通信そのものの認証が弱いため、到達元を最小化します。利用可能なティアでは NFSv4.1 と Kerberos を使い、認証・完全性・転送時暗号化を追加できます。

関連サービス・比較(AWS との対応)

観点Filestore(GCP)Amazon EFS(AWS)
位置づけマネージド共有ファイル(NFS)マネージド共有ファイル(NFS)
プロトコルNFSv3 / NFSv4.1NFSv4.1 / v4.0
容量明示指定。ティアにより拡大・縮小自動伸縮(プロビジョニング不要)
冗長範囲ティア依存:単一ゾーン / リージョン(複数ゾーン)リージョン内・複数 AZ 冗長
接続VPC ピアリングの内部 IP各 AZ のマウントターゲット
低頻度クラスなし(ティアで選択)IA クラスへライフサイクル自動移行
使い分け

共有ファイルが要る=Filestore、単一 VM の高速ブロックディスク=永続ディスク(PD)、 オブジェクト配信/バックアップ/データレイク=Cloud Storage

ハンズオン / CLI例

# Filestore インスタンスを作成(BASIC_SSD・1TiB・共有名 vol1)
gcloud filestore instances create demo-fs \
  --zone=asia-northeast1-a \
  --tier=BASIC_SSD \
  --file-share=name=vol1,capacity=1TiB \
  --network=name=default

# 割り当てられた内部 IP(NFS エンドポイント)を確認
gcloud filestore instances describe demo-fs \
  --zone=asia-northeast1-a \
  --format="value(networks.ipAddresses[0])"

# VM 側でマウント(nfs-common 導入済みとする)
# 例: IP が 10.0.0.2 の場合
sudo mkdir -p /mnt/filestore
sudo mount 10.0.0.2:/vol1 /mnt/filestore

# 容量をスケールアップ(例: 2TiB へ。縮小は不可)
gcloud filestore instances update demo-fs \
  --zone=asia-northeast1-a \
  --file-share=name=vol1,capacity=2TiB

Google Cloud Service

Filestoreを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

ストレージ

比較で見る軸

クラウド: Google Cloud / カテゴリ: ストレージ / 難易度: intermediate

導入後に効く点

Zonal / Regional は容量と性能を個別に変更可能。Basic は容量拡張のみ。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Google Cloud
カテゴリ
ストレージ
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
reliability / performance / cost

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「ストレージ / reliability」に近いか確認する。
  • 強みである「複数の VM やコンテナから同時マウントできる NFS の共有ファイルシステム。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

ストレージreliabilityperformancecost

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