クラウドサービス

Managed Service for Apache Airflow(旧 Cloud Composer)

Apache Airflow の DAG をマネージド実行し、依存関係のあるバッチやデータパイプラインを統括する Managed Service for Apache Airflow(旧 Cloud Composer)。

中級運用上の優秀性信頼性
最終更新: 2026-07-29公式ドキュメント
3つの要点
TL;DR
  1. Apache Airflow のDAGをマネージド環境で実行する。
  2. Gen 1とGen 2の2.0.xは2026年9月15日に終了予定。
  3. 再実行に備え各タスクを冪等にし重い処理は外へ出す。
製品名と旧世代の終了予定

2026年4月15日に Cloud Composer は Managed Service for Apache Airflow へ改称されました。Gen 1 と Gen 2 の 2.0.x は 2026年9月15日に終了予定です。新規環境は既定の Gen 3 を選び、旧環境は互換性を検証して移行してください。

解決する課題

依存関係のある多数のジョブを「A が終わったら B、B と C が揃ったら D」のように順序立てて回すデータパイプラインを、自前の cron や常駐スクリプトで組むと、再実行・リトライ・進行状況の把握が次第に破綻します。Managed Service for Apache Airflow(旧 Cloud Composer)は、こうしたワークフローを Python で定義した DAG として管理します。

  • 複数ステップの バッチ処理やデータパイプラインを、依存関係込みで確実に順序実行したい
  • Airflow を使いたいが、スケジューラやワーカーの クラスタ運用・パッチ適用・スケールを自前で抱えたくない
  • 失敗したタスクの リトライ・再実行・過去日分のバックフィルを仕組みとして任せたい
  • BigQuery・Dataflow・Dataproc・Cloud Storage など 多数のサービスをまたぐ連携を、共通の枠組みで記述したい
  • パイプラインの 実行状況・依存グラフ・ログを UI で可視化し、障害箇所をすぐ特定したい

主要概念と用語

  • Apache Airflow: ワークフローを Python コードで定義し、スケジュール実行・監視する OSS。Managed Service for Apache Airflow がこれをマネージドに提供する
  • 環境(Environment): Airflow 一式(スケジューラ・ワーカー・ウェブサーバ・メタデータ DB)をまとめた実行基盤の単位。プロジェクト内に複数作成できる
  • DAG(有向非巡回グラフ): タスクとその依存関係を表したワークフロー定義。循環しない(戻らない)一方向のグラフとして組む
  • タスク(Task)とオペレータ(Operator): DAG を構成する処理の単位がタスク。オペレータは「何をするか」のテンプレート(例: BigQuery 実行、HTTP 呼び出し)で、これをインスタンス化してタスクにする
  • スケジューラ(Scheduler): DAG を解析し、実行すべきタスクを依存関係に従ってワーカーへ割り当てるコンポーネント
  • ワーカー(Worker): 実際にタスクを実行するプロセス。負荷に応じてスケールする
  • DAG バッグ(DAGs フォルダ): DAG 定義の Python ファイルを置く Cloud Storage バケット上の場所。ここへ配置すると環境に取り込まれる
  • メタデータ DB: 実行履歴・タスク状態・スケジュール情報を保持するデータベース。Airflow の状態管理の中核
  • XCom: タスク間で小さな値を受け渡すための仕組み

仕様・制限・クォータ

  • ワークフローは Python で記述した DAG として定義する。分岐・並列・リトライ・センサー(条件待ち)・バックフィルなどを表現できる
  • 環境は 常時稼働する基盤であり、スケジューラ・ワーカー・ウェブサーバ・メタデータ DB が裏で動き続ける。単発の関数を都度起動するサーバーレス型とは性質が異なる
  • Gen 3 では Airflow の基盤コンポーネントをサービス側が管理し、環境容量は Data Compute Unit(DCU) とワーカー設定で調整する。利用者が GKE クラスタを直接運用する構成ではない
  • 1 環境あたりの DAG 数・タスク同時実行数・ワーカー数などには構成や環境サイズに依存する上限があり、必要に応じて環境サイズやワーカー設定を調整する
  • 現行の既定は Gen 3。Airflow のメジャー更新ではプロバイダや DAG の互換性を検証し、検証環境から段階的に移行する
  • DAG ファイルは DAGs フォルダ(Cloud Storage) に配置する。同期には通常 1〜2 分かかるため、配置直後の未検出を障害と早合点しない

内部の仕組み

横にスクロール

DAGファイルが解析され、スケジューラからワーカーへ配布され、外部処理とメタデータDBへつながる経路を示す図
Airflow基盤の可用性と状態管理はサービスが担う。DAG、依存ライブラリ、各タスクの冪等性は利用者が担う

環境を作成すると、Managed Service for Apache Airflow は Airflow の各コンポーネント(スケジューラ・ワーカー・ウェブサーバ・メタデータ DB)をマネージドな基盤上に構築します。利用者は DAG の Python ファイルを DAGs フォルダへ置くだけで、スケジューラがそれを解析し、依存関係とスケジュールに従ってタスクをワーカーへ割り当てます。

  • スケジューラは DAG を解析して 実行すべきタスクを判定し、依存が満たされたものから順にワーカーへ渡す
  • ワーカーがタスクを実行し、成否・ログ・状態をメタデータ DB に記録する。これにより再実行や進行状況の追跡が可能になる
  • 失敗したタスクは リトライポリシーに従って再試行され、上限まで失敗すると DAG 全体やダウンストリームの扱いが設定に応じて決まる
  • センサーは外部条件(ファイル到着・他ジョブ完了など)が満たされるまで待機し、整ったら後続を起動する
  • オペレータや各種フック経由で BigQuery・Dataflow・Dataproc・Cloud Storage などを呼び出し、結果を次のタスクへつなぐ
重い処理は外のサービスに委ねる

Airflow ワーカーで重い計算やデータ変換そのものを実行させると、ワーカーが詰まりスケジューリング全体が遅延します。実処理は BigQuery や Dataflow、Dataproc といった専用サービスに委ね、DAG は「いつ・どの順で・どのサービスを呼ぶか」のオーケストレーションに専念させると、スケールと保守の両面で有利です。

設計パターン / ベストプラクティス

  • データパイプラインのオーケストレーション: 抽出・変換・ロード(ETL/ELT)の各ステップを DAG のタスクとして並べ、BigQuery や Dataflow などの実処理を呼び出す中心役にする
  • 冪等なタスク設計: リトライやバックフィルで同じタスクが再実行されうるため、各タスクは何度実行しても結果が壊れない冪等な処理にする
  • 実行日(論理日付)を基準にする: 処理対象を実行時刻ではなく DAG の論理日付で切り出し、過去分のバックフィルや再実行を安全にする
  • DAG は軽く保つ: DAG ファイルのトップレベルに重い処理や外部呼び出しを書くと解析のたびに走り負荷になる。定義は軽量にし、実処理はタスク内に置く
  • 依存とトリガーの使い分け: イベント駆動の疎結合な配信は Pub/Sub や Eventarc、明確な依存グラフを持つバッチの統括は Composer、と役割を分ける
  • 環境の分離: 本番と検証で環境を分け、DAG の変更はまず検証環境で確認してから本番へ反映する

運用・監視

  • DAG ごとの 実行状況・依存グラフ・タスク状態・ログを Airflow の Web UI で確認でき、どのタスクで失敗したかを追跡できる
  • Cloud Logging に Airflow とタスクのログが出力され、Cloud Monitoring でスケジューラの健全性・タスク失敗数・キュー滞留などのメトリクスを監視してアラートを設定する
  • 失敗時は該当タスクのログと リトライ設定を確認し、必要に応じて UI や CLI からタスク単位・DAG 単位で再実行する
  • DAG が反映されない → DAGs フォルダへの配置漏れや 解析エラー(import error)、解析間隔ぶんの遅延を確認する
  • タスクが滞留する → ワーカー数や同時実行設定がボトルネックになっていないかを点検し、環境サイズやワーカーをスケールする
  • バージョンアップやライブラリ追加は 互換性を検証環境で確認してから本番へ適用する

コスト

Gen 3 は環境の DCU、Airflow メタデータ DB のストレージ、ネットワークを中心に継続課金されます。DAG を実行していない時間も環境費用が発生するため、単発トリガーとは料金特性が異なります。

費用要素課金の考え方コスト最適化のポイント
環境の稼働Gen 3のDCU利用量に継続課金用途ごとに環境を乱立させず集約する
ワーカーのスケールワーカー数や環境サイズに応じて費用が増える負荷に見合うサイズへ調整し過剰割当を避ける
メタデータ・ストレージDB やバケットの容量・実行履歴に応じて発生不要な履歴や古い DAG を整理する
呼び出し先サービスBigQuery や Dataflow など実処理側の費用は別途重い処理を効率化し再実行を減らす
常時稼働コストに注意

Composer は環境が起動している限り課金が続きます。検証用や一時的な用途で環境を作りっぱなしにすると、DAG を一切動かしていなくても費用が積み上がります。使わない環境は削除し、目的の近い DAG は環境を集約して数を抑えてください。

セキュリティ

  • 環境やタスクの実行には サービスアカウントを割り当て、呼び出すサービス(BigQuery・Cloud Storage 等)に必要な 最小権限の IAM ロールだけを付与する
  • 認証情報やトークンを DAG コードに直書きしない。Airflow の接続(Connection)や変数、Secret Manager 連携を使って機密値を外部管理する
  • Airflow Web UI へのアクセスは IAM で制御し、必要な担当者だけに権限を絞る
  • ネットワーク要件に応じて、限定公開(プライベート)構成で環境を作り、外部からの到達経路を絞る設計を検討する
  • 保存データは暗号化され、要件に応じて CMEK(顧客管理鍵) による保護にも対応する
アンチパターン

DAG のサービスアカウントに 広すぎる権限(例: プロジェクトの編集者ロール) を付与するのは危険です。タスクはそのアカウントの権限で動くため、DAG コードや依存ライブラリが侵害された場合の被害が一気に広がります。呼び出すサービスごとに必要なロールだけを与え、接続情報やキーは Secret Manager 経由で参照してください。

関連サービス・比較

同じく連携を司る Workflows と比べると、Composer は 常時稼働の Airflow 基盤で依存グラフ型のバッチ/データパイプラインを統括するのに向き、Workflows は サーバーレスで軽量な手順オーケストレーションに向きます。用途の重さと運用形態で選び分けます。

観点Cloud ComposerWorkflows
基盤Airflow 環境が常時稼働サーバーレス(常駐なし)
定義の記述Python の DAGYAML / JSON の宣言的構文
得意分野依存グラフ型のデータパイプライン軽量なサービス連携の手順
スケジュールDAG のスケジュールで定期実行Cloud Scheduler 等から起動
課金環境の稼働に継続課金実行ステップ数の従量課金
相当サービスAWS MWAAAWS Step Functions
Workflows とのすみ分け

明確な依存関係を持つ本格的なバッチ/データパイプラインで Airflow の資産やエコシステムを活かしたいなら Composer、軽量で待機中はコストを払いたくないサーバーレスな手順連携なら Workflows が向きます。常時稼働のコストを許容できるかが選択の分かれ目です。

ハンズオン / CLI例

# 1) 現行の既定世代で環境を作成(サービスアカウントを指定)
gcloud composer environments create my-env \
  --location=asia-northeast1 \
  --service-account=composer-sa@PROJECT_ID.iam.gserviceaccount.com

# 2) DAG 定義ファイルを環境の DAGs フォルダ(Cloud Storage)へ配置
gcloud composer environments storage dags import \
  --environment=my-env \
  --location=asia-northeast1 \
  --source=./my_dag.py

# 3) 取り込まれた DAG の一覧を確認(Airflow CLI を環境内で実行)
gcloud composer environments run my-env \
  --location=asia-northeast1 \
  dags list

# 4) DAG を手動トリガーして動作を確認
gcloud composer environments run my-env \
  --location=asia-northeast1 \
  dags trigger -- my_dag

# 5) Airflow Web UI の URL を確認
gcloud composer environments describe my-env \
  --location=asia-northeast1 \
  --format="value(config.airflowUri)"

Google Cloud Service

Managed Service for Apache Airflow(旧 Cloud Composer)を実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

アプリ統合

比較で見る軸

クラウド: Google Cloud / カテゴリ: アプリ統合 / 難易度: intermediate

導入後に効く点

Gen 1とGen 2の2.0.xは2026年9月15日に終了予定。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Google Cloud
カテゴリ
アプリ統合
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
operational / reliability

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「アプリ統合 / operational」に近いか確認する。
  • 強みである「Apache Airflow のDAGをマネージド環境で実行する。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

アプリ統合operationalreliability