クラウドサービス

Cloud Identity

従業員のアカウント・グループ・デバイスを一元管理できる、Google Cloud と Workspace 共通の ID 基盤(IDaaS)。SSO や 2 段階認証で組織の入口を守る。Microsoft Entra ID に相当。

中級セキュリティ運用上の優秀性
最終更新: 2026-07-29公式ドキュメント
3つの要点
TL;DR
  1. 組織の利用者とグループをGoogle共通の台帳で管理する。
  2. 外部台帳から利用者を同期し、認証はSSOへ委任できる。
  3. IAM権限は個人でなくグループへ付与し、退職時に外す。

解決する課題

組織の従業員アカウントを一元管理し、Google Cloud・Workspace・各種 SaaS への入口を安全に揃えます。Identity Platform が「あなたのアプリにログインする顧客」を扱うのに対し、Cloud Identity は「自社の社員・グループ・端末」を管理する社内向けの ID 基盤(IDaaS)です。

  • 部署ごとにアカウントがバラバラ → 組織ドメイン配下でユーザーとグループを一元管理したい
  • アプリごとに別パスワード → シングルサインオン(SSO)でログインの入口を 1 つにまとめたい
  • パスワード漏洩が怖い → 2 段階認証(2SV)やセキュリティキーを全社で必須化したい
  • 私物・貸与端末からの不正アクセスが心配 → デバイス管理(MDM)でアクセス条件を縛りたい
  • Google Cloud の IAM で誰に権限を渡すかの「誰」の供給元を一本化したい

対応する他クラウドのサービスは Microsoft Entra ID(旧 Azure AD)、AWS では IAM Identity Center が近い位置づけです。Cloud Identity は Google Workspace と同じ管理基盤を共有し、メール等の生産性機能を外してID 管理に特化した製品にあたります。

主要概念と用語

  • 組織(Organization): Cloud Identity のドメインに対応する Google Cloud の最上位ノード。リソース階層の頂点で、IAM やポリシーの起点になる
  • ユーザー: 社内の従業員アカウント(例 alice@example.com)。Google Cloud にログインする人や、IAM のプリンシパル user: の実体
  • グループ: ユーザーをまとめる単位。IAM では group: として扱い、個人ではなくグループにロールを付与することで入退社に強くなる
  • 管理コンソール(Admin Console): ユーザー・グループ・デバイス・セキュリティ設定を行う管理画面(admin.google.com)
  • シングルサインオン(SSO): 外部 IdP から Google への認証委任は SAML / OIDC プロファイルで構成する。Google を IdP として外部 SaaS へログインさせる場合は SAML アプリ連携を使う
  • 2 段階認証プロセス(2SV / MFA): パスワードに加え、確認コードやセキュリティキーなど第二要素を要求する仕組み
  • デバイス管理(エンドポイント管理): スマホ・PC を登録し、画面ロックや暗号化、紛失時のワイプを強制する MDM 機能
  • ディレクトリ同期: 既存の社内ディレクトリ(オンプレ AD など)とユーザー情報を同期する仕組み(Google Cloud Directory Sync 等)
  • 無料エディションと Premium エディション: 基本管理は無料エディションで、デバイス管理の強化やセキュアな機能の一部は Premium で提供される

仕様・制限・クォータ

  • グローバルサービスで、ID・グループ・デバイス情報は組織(ドメイン)に紐づく。リージョンには依存しない
  • ドメインの所有権確認が必要。DNS レコード等でドメインを検証してから利用を開始する
  • 無料エディションは既定で 50 ユーザーライセンス。Google Workspace サポートの申請フォームから追加の無料ライセンスを依頼できる。Premium エディションは有償で、デバイス管理やセキュリティ機能が拡張される
  • IAM の domain: / group: プリンシパルとして参照され、Google Cloud 側の権限付与の前提になる
  • Workspace との関係: 同一基盤のため、Workspace 契約があれば Cloud Identity 相当の ID 管理機能が含まれる
  • Premium の単価とエディション差分は変更され得るため、本番設計時は公式の料金・エディション表を確認する
Workspace との違い

Cloud Identity と Google Workspace は同じ管理基盤を共有します。メール・ドライブ・カレンダー等の生産性機能まで要るなら WorkspaceID とアクセス管理だけ要るなら Cloud Identity、と捉えると整理しやすいです。両者を組織内で併用することもできます。

内部の仕組み

横にスクロール

人事または外部ディレクトリから利用者とグループをCloud Identityへ同期し、SSO認証後にGoogle Cloudと外部サービスへアクセスする流れ
利用者とグループの同期は外部台帳から Google 側への一方向として設計し、認証だけを外部IdPへ委任できます。入社、異動、退職の源泉と、グループを介したIAM権限を分けて監査します。

Cloud Identity は組織のドメインに対するディレクトリ(ユーザー・グループの台帳)を保持し、認証要求の入口(IdP)として振る舞います。

  1. 管理者がドメインを検証し、管理対象アカウントで最初の Google Cloud プロジェクトを作ると、組織リソースが自動プロビジョニングされる
  2. ユーザー・グループを管理コンソールや API、ディレクトリ同期で登録する
  3. 従業員がログインすると、Cloud Identity がパスワードと第二要素(2SV)を検証して認証する
  4. 外部 SaaS へは SAML SSO で ID を連携し、各アプリでの再ログインを省く。外部 IdP から Google へ認証を委任する方向では SAML / OIDC を選べる
  5. Google Cloud では、これらのユーザー・グループが IAM のプリンシパルとして参照され、ロール付与の対象になる
認証の入口と権限は別レイヤー

Cloud Identity は「誰が組織のメンバーか/どう認証するか」を担います。「そのメンバーがどのクラウドリソースに何をできるか」は Cloud IAM 側でロールを付与して決めます。ID 管理と権限管理を別レイヤーとして設計してください。

設計パターン / ベストプラクティス

  • 権限はグループへ: IAM ロールは個人ではなく Cloud Identity のグループに付与し、入退社はグループのメンバー変更だけで反映させる
  • 2 段階認証を全社必須化: 特に管理者アカウントはセキュリティキー(フィッシング耐性のある要素)を必須にする
  • 特権アカウントを分離: 日常業務用と組織管理者用のアカウントを分け、管理者権限の常用を避ける
  • 外部 SaaS は SAML SSO へ集約: 各 SaaS の個別パスワードを廃し、Cloud Identity を IdP にしてログインを一本化する
  • デバイス条件でアクセス制御: 管理対象デバイスや画面ロック等の条件を、コンテキストアウェアなアクセス制御と組み合わせる
  • オンプレ AD があれば同期: 既存ディレクトリと同期し、ID の二重管理を避ける

運用・監視

  • 管理コンソールでユーザーの追加・停止・削除、グループ編成、セキュリティ設定を行う
  • 監査ログでログイン試行・管理操作・デバイス操作を追跡し、不審なサインインを検知する
  • ログイン要求(2SV 登録状況)を監視し、未登録ユーザーや弱い認証要素の利用を洗い出す
  • 退職処理ではアカウント停止とデバイスのワイプ、共有データの引き継ぎを手順化する
  • デバイスインベントリで登録端末を把握し、紛失・盗難時にリモートワイプを実行する

コスト

基本的な ID・グループ管理は無料エディションで利用でき、既定で 50 ユーザーライセンスが提供されます。追加の無料ライセンスは申請できます。デバイス管理の強化やセキュリティ機能の一部は有償の Premium エディションで提供され、料金はユーザー単位の月額です。

項目課金の考え方備考
無料エディション既定 50 ユーザー、追加は申請可能基本の ID/グループ/SSO を提供
Premium エディションユーザー単位の月額デバイス管理・セキュリティ機能を拡張
Workspace 同梱Workspace 料金に含まれる生産性機能込みで ID 管理を利用
数値は都度確認

無料エディションは既定 50 ライセンスで、追加は無償申請できます。Premium の単価とエディション差分は変動するため、公式の料金ページで確認し、必要な機能(コンテキストアウェアアクセスや高度な端末管理など)から選んでください。

セキュリティ

  • 2 段階認証を必須化し、管理者にはフィッシング耐性のあるセキュリティキーを強制する
  • 管理者権限を最小化し、特権アカウントを日常利用と分けて常時の高権限を避ける
  • デバイス管理で、画面ロック・暗号化・未管理端末のブロックなどアクセス条件を強制する
  • 不審なサインインを監査ログとアラートで検知し、侵害時はアカウント停止とセッション失効を行う
  • 退職・異動時の即時失効を運用に組み込み、放置アカウントを残さない
アンチパターン

組織管理者アカウントを日常業務に常用したり、2 段階認証を未設定のまま運用するのは危険です。管理者は専用アカウントとセキュリティキーで保護し、権限はグループ経由で最小限に保ってください。

関連サービス・比較

Cloud Identity が供給するユーザー・グループは、Google Cloud の権限制御を担う Cloud IAM のプリンシパルとして使われます。両者は役割が異なり、組み合わせて使います。

観点Cloud IdentityCloud IAM
主な役割従業員の ID・グループ・端末の管理(認証の入口)クラウドリソースへのアクセス制御(認可)
扱う対象ユーザー・グループ・デバイスロールとポリシー(権限の束)
管理場所管理コンソールGoogle Cloud コンソール / gcloud
他クラウド相当Microsoft Entra ID / IAM Identity CenterAzure RBAC / AWS IAM
連携IAM へプリンシパルを供給供給されたプリンシパルにロールを付与
役割分担を意識

Cloud Identity は「メンバーと認証」、Cloud IAM は「権限」を担います。ユーザーやグループは Cloud Identity 側で整え、Google Cloud のロール付与は IAM 側で行う、と分けて設計します。

ハンズオン / CLI例

# Cloud Identity / Admin SDK 系 API を有効化
gcloud services enable cloudidentity.googleapis.com --project=my-project

# Cloud Identity のグループを作成(社内チーム用)
gcloud identity groups create dev-team@example.com \
  --organization=123456789012 \
  --display-name="Development Team"

# 作成したグループにメンバーを追加
gcloud identity groups memberships add \
  --group-email=dev-team@example.com \
  --member-email=alice@example.com

# グループ単位で IAM ロールを付与(個人ではなくグループに渡すのが定石)
gcloud projects add-iam-policy-binding my-project \
  --member="group:dev-team@example.com" \
  --role="roles/viewer"

Google Cloud Service

Cloud Identityを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

エンドユーザー / VDI

比較で見る軸

クラウド: Google Cloud / カテゴリ: エンドユーザー / VDI / 難易度: intermediate

導入後に効く点

外部台帳から利用者を同期し、認証はSSOへ委任できる。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Google Cloud
カテゴリ
エンドユーザー / VDI
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
security / operational

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「エンドユーザー / VDI / security」に近いか確認する。
  • 強みである「組織の利用者とグループをGoogle共通の台帳で管理する。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

エンドユーザー / VDIsecurityoperational