クラウドサービス

Google Cloud VMware Engine

オンプレの VMware 環境をそのまま Google Cloud へ持ち込めるマネージド VMware 基盤。vSphere や vSAN を作り直さず短期間で移行・拡張できる。AWS の VMware Cloud on AWS に相当。

中級信頼性運用上の優秀性セキュリティ
最終更新: 2026-07-29公式ドキュメント
3つの要点
TL;DR
  1. 専用ノード上のvSphere、vSAN、NSX、HCXを私設クラウドとして利用する。
  2. VPCとオンプレを接続し、重複しないIP範囲と移行経路を先に設計する。
  3. Googleは物理基盤を管理し、利用者はVM、ゲストOS、VCFライセンスを管理する。

解決する課題

  • オンプレの VMware 資産(VM・テンプレート・運用ツール)をそのままクラウドへ移したい
  • 仮想マシンを 再構築・リプラットフォームせずに短期間でリホスト移行したい
  • データセンターの退役・更改で、ハードウェア調達や保守を手放したい
  • 災害復旧(DR)やバースト容量を クラウド側に確保したい
  • VMware の操作感(vCenter, vSphere Client)を変えずに運用を続けたい

VMware Engine は、vSphere・vSAN・NSX といった VMware Cloud Foundation のスタックを Google が運用するベアメタル上に展開し、利用者に専用環境として提供します。アプリの作り替えを伴わない「リフト&シフト」を最短経路で実現できるのが最大の価値です。

主要概念と用語

  • プライベートクラウド(Private Cloud): VMware Engine が提供する隔離された VMware 環境の単位。専用の vCenter・NSX Manager を持つ
  • クラスタ(Cluster): プライベートクラウド内のノードの束。ノードを追加・削除して容量を増減する
  • ノード(Node): クラスタを構成するベアメタルのホスト。CPU・メモリ・ローカルフラッシュを備え、vSAN のストレージにも寄与する
  • vSphere / vCenter: VM を作成・管理する VMware の中核。利用者は使い慣れた vCenter で操作する
  • vSAN: ノードのローカルストレージを束ねて作るソフトウェア定義の分散ストレージ
  • NSX: ソフトウェア定義ネットワーク。論理スイッチ・ルーター・分散ファイアウォールを提供する
  • HCX: オンプレと VMware Engine 間の VM 移行・ネットワーク延伸を行う VMware の移行ツール
  • VMware Engine ネットワーク: Standard ネットワークは VPC Network Peering、2023年11月より前の一部プロジェクトに残る Legacy ネットワークは Private Service Access で接続する

仕様・制限・クォータ

  • ノード単位での購入: 標準プライベートクラウドは3ノード以上、ストレッチ構成は6ノード以上。検証用の単一ノード構成は60日後に削除され、SLA対象外
  • リージョン × ゾーンに配置される。可用性を高めるには対応構成でストレッチクラスタ等を検討する
  • ストレージは vSAN が基本で、必要に応じてクラウド側のファイル/オブジェクトストレージを併用できる
  • ノード数・プライベートクラウド数・ネットワーク関連にはクォータがあり、引き上げ申請が可能
  • 利用できるリージョンやノードの世代・スペックは時期により異なるため、最新は公式ドキュメントで確認する
  • 2025年11月1日以降の新規容量は、Broadcom から購入した VCF Portable ライセンスを持ち込む必要がある。Google Cloud のノード料金とは別に契約・数量を管理する

数値や対応リージョンは変動するため、正確な上限・SLA は公式ドキュメントを参照してください。

内部の仕組み

VMware Engine は、Google が運用するベアメタルのノード上に VMware Cloud Foundation(vSphere, vSAN, NSX)を構成し、利用者ごとに隔離されたプライベートクラウドとして払い出します。利用者は vCenter にログインし、オンプレと同じ操作で VM を管理します。基盤のハードウェア保守やファームウェア、ハイパーバイザのパッチ適用といった下回りは Google とパートナーが担います。

ストレージは各ノードのフラッシュを vSAN で束ねた分散ストレージが基本です。ノードを追加すると計算資源とストレージ容量が同時に増えます。ネットワークは NSX によるオーバーレイで提供され、論理セグメントや分散ファイアウォールをソフトウェア的に定義できます。

Standard VMware Engine ネットワークは VPC Network Peering で VPC と接続します。Cloud Storage や BigQuery など Google API へ非公開で到達するには、Private Google Access 用の DNS と VIP 経路を構成します。Cloud SQL など Private Service Access 側のサービスは対象ごとのピアリング経路を設計します。オンプレとの間は Cloud VPN / Cloud Interconnect で接続し、移行時は HCX で VM をライブ/一括移行したり L2 ネットワークを延伸したりします。

作り替えずに移せるのが価値

VMware Engine の主眼は「既存 VM をそのまま動かす」ことです。クラウドネイティブ化(コンテナ化やマネージド DB への載せ替え)は移行後に段階的に進める前提とし、まずは止めずに移すリホストを優先すると失敗が少なくなります。

横にスクロール

オンプレミスのVMware環境をHCXでGoogle Cloud VMware Engineの私設クラウドへ移し、NSXをVPCピアリングとPrivate Google AccessでGoogle Cloudへ接続する構成
移行経路はHCX、ワークロード内通信はNSX、Google Cloud側との接続はVPCピアリングというように責任を分けます。IP範囲の重複と専用ノード容量が移行計画の主要な制約です。

設計パターン / ベストプラクティス

  • 段階移行: HCX でアプリ単位・依存関係単位に分けて移行し、切り戻し可能な状態を保つ
  • リホスト → リファクタの順: まずそのまま移し、移行後に必要なものから Compute Engine / GKE / マネージドサービスへ載せ替える
  • 可用性設計: 単一ノード構成は避け、本番は複数ノードで冗長化。要件次第でゾーンをまたぐ構成を検討する
  • ネットワーク連携: Google Cloud のサービスを使う場合は VPC ピアリング経由で低遅延に寄せ、egress 経路を整理する
  • DR 用途: オンプレの待機系を VMware Engine 側に置き、平常時はノードを絞ってコストを抑える

運用・監視

  • 日常運用は使い慣れた vCenter / vSphere Client で行える。VM のメトリクスやアラートも従来ツールを継続利用できる
  • 基盤の Cloud Monitoring / Cloud Logging と組み合わせ、ノードやネットワークの状態、課金に直結する容量を可視化する
  • ノード使用率(CPU・メモリ・vSAN 容量)を監視し、逼迫前にクラスタへノードを追加する
  • ハイパーバイザや基盤のメンテナンスは Google 側で実施されるため、メンテナンス通知を確認し業務影響を見積もる
  • 移行作業中は HCX のレプリケーション状況と切り替えウィンドウを管理する

コスト

  • 課金は基本的にノードの稼働時間に基づき、ノード数 × 時間で積み上がる。1ノードでも計算とストレージを内包するため、最小構成でも一定のコストが発生する
  • 長期利用が見込めるなら確約利用割引(CUD)相当のコミットでオンデマンドより単価を下げられる場合がある
  • Google Cloud の他サービス利用料、外部への通信(egress)、相互接続(Interconnect/VPN)の費用は別途かかる
  • 新規容量では VCF Portable ライセンスをBroadcomから別途購入する。ノードのオンデマンド/CUD費用だけで見積もらない
  • コスト最適化の要点は、ノード数の適正化(過剰なノードを持たない)と、DR など低稼働用途での最小構成維持

具体的な料金やコミット割引率は変動するため、見積もりは公式の料金ページと料金計算ツールで確認してください。

セキュリティ

  • ネットワークは NSX の分散ファイアウォールでマイクロセグメンテーションを行い、東西方向の通信も最小化する
  • 操作権限は Cloud IAMvCenter のロールの二層で管理し、それぞれ最小権限にする
  • vSAN は保存時暗号化が既定で有効。要件に応じて、プライベートクラウド単位の Cloud KMS / CMEK または対応する外部 KMS を選ぶ
  • オンプレ・クラウド間は Cloud VPN / Interconnect の暗号化・専用経路で接続し、公開経路への露出を避ける
権限とネットワーク露出に注意

広すぎる IAM ロールや vCenter の管理者権限を安易に配らないでください。また、プライベートクラウドの管理面を不必要に外部公開しないこと。用途ごとに最小権限とし、管理アクセスは限定した経路からのみ許可します。

関連サービス・比較

純粋な IaaS である Compute Engine と比べると、VMware Engine は「既存 VMware をそのまま動かす」点に特化しています。

観点VMware EngineCompute Engine
位置づけマネージド VMware 基盤GCP の基本 IaaS
移行のしやすさ既存 VM をそのまま移せるVM の作り直し/再構築が前提
管理ツール使い慣れた vCentergcloud / コンソール
ストレージvSANHyperdisk / 永続ディスク(PD)
主な用途リホスト移行・DRクラウドネイティブな新規構築
AWS の対応VMware Cloud on AWSEC2

ハンズオン / CLI例

# Standard VMware Engineネットワークを先に作成
gcloud vmware networks create my-ve-network \
  --location=global \
  --type=STANDARD

# プライベートクラウドを作成(本番の標準構成は3ノード以上)
gcloud vmware private-clouds create my-private-cloud \
  --location=asia-northeast1-a \
  --cluster=my-cluster \
  --node-type-config=type=standard-72,count=3 \
  --management-range=192.168.0.0/24 \
  --vmware-engine-network=my-ve-network

# プライベートクラウドの一覧を確認
gcloud vmware private-clouds list \
  --location=asia-northeast1-a

# クラスタにノードを追加して容量を増やす
gcloud vmware private-clouds clusters update my-cluster \
  --private-cloud=my-private-cloud \
  --location=asia-northeast1-a \
  --update-nodes-config=type=standard-72,count=4

Google Cloud Service

Google Cloud VMware Engineを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

コンピューティング

比較で見る軸

クラウド: Google Cloud / カテゴリ: コンピューティング / 難易度: intermediate

導入後に効く点

VPCとオンプレを接続し、重複しないIP範囲と移行経路を先に設計する。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Google Cloud
カテゴリ
コンピューティング
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
reliability / operational / security

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「コンピューティング / reliability」に近いか確認する。
  • 強みである「専用ノード上のvSphere、vSAN、NSX、HCXを私設クラウドとして利用する。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

コンピューティングreliabilityoperationalsecurity