クラウドサービス

OCI GPU Compute (Bare Metal/VM)

NVIDIAまたはAMD GPUを搭載するベアメタル/VMで、学習・推論・HPCを高速化する。対応シェイプはRDMAで複数ノードを束ねられ、世代・在庫・ソフトウェア基盤を合わせて選ぶ。

中級パフォーマンス効率コスト最適化信頼性
最終更新: 2026-07-29公式ドキュメント
3つの要点
TL;DR
  1. GPUシェイプのVMまたはベアメタルで、学習、推論、HPCを加速する。
  2. 単一ノード内のGPU接続と、ノード間RDMAを分けて並列方式を選ぶ。
  3. 高価で在庫が限られるため、容量確保、再開設計、データ供給を先に整える。

解決する課題

  • 大規模言語モデルの学習・ファインチューニングに必要な GPU を確保したい
  • 推論・画像生成・HPC(数値計算・シミュレーション)を高速化したい
  • 単一ノードに収まらないモデルを、複数 GPU ノードへ分散して学習したい
  • ノード間の通信がボトルネックにならない低遅延・高帯域ネットワークが欲しい

主要概念と用語

  • GPU シェイプ: BM.GPU 系(ベアメタル)と VM.GPU 系(VM)があり、NVIDIA または AMD の GPU を搭載する。GPU 数、GPU メモリ、CPU、ローカル NVMe、ネットワークはシェイプごとに固定される
  • ベアメタル / VM: ベアメタルは仮想化レイヤーなしでホストを専有し全 GPU を使える。VM は GPU をより小さい単位で使える
  • クラスタネットワーク: 複数の GPU ノードを RDMA(RoCE) で接続し、低遅延・高帯域でノード間通信を行う専用ネットワーク
  • GPU メモリ(VRAM): GPU 上のメモリ。モデルとバッチが収まるかを左右する最重要リソース
  • ノード内 GPU 接続: NVIDIA の NVLink / NVSwitch、AMD の Infinity Fabric などで、1台の複数 GPU を高速に接続する
  • GPU ドライバ / CUDA・ROCm: NVIDIA は CUDA、AMD は ROCm を中心に、ドライバ、ランタイム、学習基盤、イメージの対応版をそろえる

仕様・制限・クォータ

  • GPU シェイプは世代・GPU 種別ごとに搭載数や GPU メモリが異なる。提供有無はリージョンと可用性ドメインに依存し、全リージョンにあるわけではない
  • 現行ベアメタルには NVIDIA A100 / H100 / H200 / B200 / B300 / GB200 / GB300 / L40S / RTX PRO 系と、AMD MI300X / MI355X 系がある。追加・廃止があるため、設計時は ListShapes の結果を正とする
  • GPU 容量は需要が高く、サービスリミット(クォータ)の引き上げ申請や容量予約が前提になることが多い
  • 全ベアメタル GPU と、VM.GPU.A10 以外の GPU VM は停止中もコンピューティング課金が続く。VM.GPU.A10 は停止で Compute 課金が一時停止するが、ストレージ課金とサービス制限の消費は残る
  • マルチノード学習にはクラスタネットワーク対応のシェイプが必要。RDMA を使うには対応シェイプ・イメージ・配置の条件を満たす
  • OCPU/メモリの考え方は通常の Compute と共通だが、GPU 数は固定の組み合わせで提供されることが多い

内部の仕組み

OCI の GPU はベアメタルでは仮想化レイヤーなしにホストの全 GPU を専有できます。ノード内は GPU 世代固有の高速接続、複数ノード間は対応シェイプの RDMA を使います。ノード内とノード間で、通信層と対応シェイプが異なる点が重要です。

  • クラスタネットワークは RDMA over Converged Ethernet(RoCE) を用い、CPU を介さずに GPU/メモリ間でデータを転送して低遅延・高帯域を実現する
  • ノードは近接配置され、集団通信(all-reduce など)の遅延を抑える
  • ローカル NVMe を持つシェイプはホスト直結で高速だが揮発性。永続化はブロックボリューム/Object Storage へ
単一ノードか、マルチノードか

モデルとバッチが 1 ノードの GPU メモリに収まるなら、まず単一ノードで始めるのが簡単です。収まらない、または学習を高速化したい場合に、クラスタネットワーク対応シェイプでマルチノードへ広げます。

横にスクロール

Object StorageからGPUノードへ学習データを供給し、ノード内GPU接続とノード間RDMAで分散演算し、チェックポイントを外部保存する処理経路
単一ノード内のGPU間接続と、複数ノード間のRDMAは別の層です。ストレージ供給と通信が遅いとGPUが待機するため、容量予約とチェックポイントを含めて稼働率を設計します。

設計パターン / ベストプラクティス

  • まず VM の小さい GPU で検証し、本番の大規模学習でベアメタル/クラスタネットワークへ拡張
  • 分散学習はクラスタネットワーク対応シェイプを選び、近接配置で集団通信の遅延を抑える
  • データセットや成果物は Object Storage に置き、ノードはステートレスに保って再作成しやすくする
  • GPU ドライバと CUDA / ROCm の整合を取るため、対象GPU対応イメージや検証済みのHPC/MLイメージを起点にする
  • 高価な GPU を遊ばせないよう、ジョブ単位で起動・終了し、利用状況を監視して稼働率を上げる

運用・監視

  • OCI Monitoring でインスタンスのメトリクス、Logging でログを収集
  • GPU 使用率・GPU メモリ・温度は nvidia-smi や NVIDIA のエクスポータで取得し、稼働率とボトルネックを把握
  • クラスタネットワーク利用時はノード間帯域・遅延と集団通信の効率を確認
  • 起動トラブルはインスタンスコンソール接続 / シリアルコンソールで調査。GPU が見えない場合はドライバとイメージの整合を確認

コスト

GPU は単価が高いため、稼働率と中断許容性の設計がコストを大きく左右します。

購入オプション特徴向いている用途
従量(PAYG)定価で即時利用短期・検証・単発ジョブ
年間ユニバーサルクレジットコミットで割引定常的な学習・推論
容量予約GPU 枠を事前確保確実に確保したい大規模学習
プリエンプティブルVM.GPU2/3系のみ、従量比50%引き2分通知で再開できる単体バッチ
停止しても課金が止まらないことがある

全ベアメタルと VM.GPU.A10 以外の GPU VM は、停止中もコンピューティング課金が続きます。VM.GPU.A10 は停止で Compute 課金が一時停止しますが、ボリューム課金とサービス制限の消費は残ります。OS 内のシャットダウンだけでなく OCI の停止・終了操作を使い、シェイプ別の課金動作を確認してください。

プリエンプティブルGPUは対象が限定される

プリエンプティブルで選べる GPU は VM.GPU2 / VM.GPU3 系です。ベアメタル、容量予約、インスタンス構成、インスタンスプールでは使えないため、現行の高性能 GPU クラスタを割引対象とみなさないでください。

セキュリティ

  • インスタンスプリンシパルで資格情報のハードコードを回避し、Object Storage などへ安全にアクセス
  • プライベートサブネット + セキュリティリスト / NSG で公開範囲を最小化し、必要なら Bastion 経由で接続
  • ブート/ブロックボリュームは既定で暗号化、鍵は OCI Vault で管理
  • モデルや学習データは機微情報になり得るため、コンパートメントと IAM ポリシーで分離・最小権限を徹底

関連サービス・比較

通常の OCI Compute が CPU 中心の汎用 IaaS なのに対し、GPU Compute はそのシェイプ選択肢のうち GPU とクラスタネットワークに特化した使い方です。

観点OCI GPU ComputeOCI Compute(CPU)
主な用途学習・推論・HPC汎用 IaaS・Web・DB
アクセラレータNVIDIA GPUなし(CPU のみ)
ノード間接続RDMA クラスタネットワーク通常の VCN
停止時課金A10 VM以外と全BMは継続標準 VM は停止で一時停止
AWS 相当P / G 系インスタンスEC2 汎用インスタンス

ハンズオン / CLI例

# GPU 対応シェイプの一覧を確認(コンパートメント内で利用可能なシェイプ)
oci compute shape list \
  --compartment-id ocid1.compartment.oc1..aaaa \
  --query "data[?contains(shape, 'GPU')].{Shape:shape, GPUs:gpus, GPUDescription:\"gpu-description\"}" \
  --output table

# VM の GPU シェイプでインスタンスを起動(要: 適切な GPU 対応イメージ OCID)
oci compute instance launch \
  --availability-domain "xxxx:AP-TOKYO-1-AD-1" \
  --compartment-id ocid1.compartment.oc1..aaaa \
  --shape "VM.GPU.A10.1" \
  --image-id ocid1.image.oc1..bbbb \
  --subnet-id ocid1.subnet.oc1..cccc \
  --display-name gpu-train

# 起動後、SSH接続してGPUを確認(ベンダーに合わせる)
# NVIDIA: nvidia-smi
# AMD:    rocm-smi

OCI Service

OCI GPU Compute (Bare Metal/VM)を実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

コンピューティング

比較で見る軸

クラウド: OCI / カテゴリ: コンピューティング / 難易度: intermediate

導入後に効く点

単一ノード内のGPU接続と、ノード間RDMAを分けて並列方式を選ぶ。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
OCI
カテゴリ
コンピューティング
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
performance / cost / reliability

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「コンピューティング / performance」に近いか確認する。
  • 強みである「GPUシェイプのVMまたはベアメタルで、学習、推論、HPCを加速する。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

コンピューティングperformancecostreliability