クラウドサービス

Compute Cloud@Customer

OCI のコンピュート、ネットワーク、ストレージを自社データセンター内で稼働させ、データ所在地や低遅延の要件を満たすラック型 IaaS。基盤は Oracle が管理し、利用料は OCI の請求体系で扱う。

中級運用上の優秀性セキュリティ信頼性パフォーマンス効率
最終更新: 2026-07-29公式ドキュメント
3つの要点
TL;DR
  1. 自社施設のOracle管理基盤で計算、ネットワーク、ストレージを使う。
  2. 資源操作はローカル、IAMの変更元と課金管理はOCIテナンシに置く。
  3. 接続断でもローカル運用は続くが、IAM同期とOracle運用は止まる。

解決する課題

クラウドの俊敏さは欲しいものの、データを自国・自社の外に出せない、あるいは現場設備との通信に低遅延が要る、という要件はクラウド移行の障壁になりがちです。Compute Cloud@Customer は、OCI のコンピュート基盤そのものを自社データセンター内のラックとして動かし、この対立を解消します。

  • データ所在地(データレジデンシ)や規制で、データを自社施設の外に出せない
  • 工場・店舗・拠点の設備と低遅延で通信したい(現地でデータ処理を完結させたい)
  • 既存のオンプレ資産と同一ネットワーク内でクラウド的に動かしたい
  • ハードウェアの調達・保守・パッチからは解放され、クラウドの運用体験を手元で得たい
  • 接続が不安定な環境でも、ローカルでコンピュートを動かし続けたい

主要概念と用語

  • Compute Cloud@Customer ラック: 自社データセンターに設置される、OCI のコンピュート・ストレージ・ネットワーク機能を内蔵したハードウェア。Oracle が所有・遠隔管理し、顧客は上で動くサービスを使う
  • OCI Dedicated Region との違い: Dedicated Region は多数の OCI サービスを含むリージョンを顧客施設に構築する。Compute Cloud@Customer は、コンピュート、ネットワーク、ストレージを中心とするラック規模の IaaS
  • ローカル管理面: VM、VCN、ストレージなどの作成・変更・削除を、Compute Cloud@Customer Console、対応する OCI CLI / API、Terraform からローカルに実行する
  • テナンシ / コンパートメント / IAM: IAM リソースの変更元は OCI テナンシにあり、ラックへ同期・キャッシュされる。接続断中にローカルで IAM を変更することはできない
  • シェイプ / VM: ラックの容量の範囲内で、フレキシブルシェイプ(OCPU・メモリ指定)の VM を起動する
  • 遠隔管理(Oracle 運用): ハードウェアの監視・パッチ・ファームウェア更新は Oracle が遠隔で実施し、顧客はインフラ運用から解放される

仕様・制限・クォータ

  • ラックは有限の物理容量(OCPU・メモリ・ストレージ)を持ち、起動できる VM 総量はその範囲に収まる。クラウドのように事実上無制限ではない点が最大の違い
  • 提供されるのはコンピュート中心のサービス群で、パブリック OCI の全サービスがそのまま使えるわけではない。利用可能なサービスは提供仕様に従う
  • 設置にはデータセンター側の前提条件(電力・冷却・物理スペース・ネットワーク接続)を満たす必要がある
  • 容量を増やしたい場合は、原則としてラックの追加・拡張で対応する(クラウドのオンデマンド拡張とは性質が異なる)
  • Oracle が遠隔管理するため、ハードウェアやコントロールプレーンの保守ウィンドウが伴う
  • OCI テナンシとの常時接続が前提。短時間の断には耐えるが、接続断は障害として復旧し、IAM 同期や Oracle の監視・保守が止まる時間を最小化する
  • 具体的な提供シェイプ・容量・対応リージョン・前提値は版や地域で変わるため、契約・公式ドキュメントで確認する

内部の仕組み

Compute Cloud@Customer は、OCI のコンピュート、ストレージ、ネットワークを顧客データセンター内の Oracle 管理基盤で提供します。クラウド資源のライフサイクル操作は、ローカルの Compute Cloud@Customer Console、対応する OCI CLI / API、Terraform が受け付けます。一方、ユーザー、グループ、動的グループ、ポリシーなどの IAM リソースは OCI テナンシで変更し、ラックへ同期・キャッシュします。この二つの管理面を同じものとして扱わないことが重要です。

データと処理は顧客施設内に留まるため、データ所在地要件を満たしつつ、現地設備と低遅延で通信できます。OCI テナンシとの接続が切れても、既存ワークロードに加え、ローカル管理面からの作成・変更・削除や OCPU 変更は継続できます。ただし、IAM の変更・同期、OCI 側からの基盤管理、Oracle の監視や自動保守は接続回復まで止まります。

どこで動くかが本質

Compute Cloud@Customer の価値は「OCI と同じ操作体験を、データを外に出さずに自社施設内で得られる」点にあります。パブリック OCI と同じ API・概念で扱える一方、容量はラックの物理上限に縛られる、という両面を理解しておくと設計を誤りません。

横にスクロール

OCIテナンシをIAM変更元とし、顧客施設内のCompute Cloud@Customerローカル管理面で資源を操作する構成、接続断時の継続範囲、共有責任境界
資源操作は施設内の管理面、IAM変更とOracle運用はOCI側です。接続断時もローカル操作は続きますが、IAM同期とOracle運用は停止します。

設計パターン / ベストプラクティス

  • ハイブリッド前提で設計する。機微データや低遅延処理はラックで、バースト需要やバックアップ・分析はパブリック OCI 側で受ける役割分担を考える
  • ラックは有限容量なので、シェイプとワークロードの容量計画を前もって行い、ピークと余裕を見積もる
  • IAM は OCI テナンシを変更元にし、同期対象と接続断中に実行できない変更を運用手順へ明記する
  • VM・ブートボリュームのバックアップを計画し、災害対策としてパブリック OCI リージョンへの退避経路を用意する
  • アプリはステートを外部化しておき、容量追加や保守時の移設・再配置に強い構成にする
  • ネットワークは現地データセンターのセグメントと整合させ、必要な通信のみを許可する

運用・監視

  • VM・ネットワーク・ストレージの作成や状態確認は、Compute Cloud@Customer Console / 対応する API・CLI・Terraform からローカルに行う
  • メトリクスやログは OCI の Monitoring / Logging に相当する仕組みで取得し、容量使用率(残り OCPU・メモリ・ストレージ)を継続的に監視する
  • ハードウェアとコントロールプレーンの保守・パッチは Oracle が遠隔で実施するため、顧客はワークロード側の運用に集中できる
  • 容量が逼迫してきたら、VM の整理・配置見直し、またはラックの拡張・追加を検討する
  • OCI への接続断中も、既存 VM とローカルの資源ライフサイクル操作は継続できる。反対に、IAM 同期と Oracle の監視・保守は停止するため、切断を定常運用にせず早期復旧する

コスト

Compute Cloud@Customer の料金は標準の OCI 請求構造でテナンシの請求へ計上されます。契約、導入構成、サービス利用量、コミットメントによって条件が変わるため、単純な「ラック全体の完全従量課金」と決めつけず、見積書と課金明細で確認します。ハードウェアの所有と基盤保守は Oracle 側です。

コスト要素内容ポイント
契約・導入構成基盤構成や契約上のコミットメント契約条件と見積書を確認
サービス利用VM・ストレージなどの利用OCIテナンシの請求明細で追跡
運用負荷監視・パッチ・故障対応Oracle の遠隔管理で自社負担を軽減
拠点展開拠点ごとにラックを設置現地処理で広域回線コストを抑制
容量はラック上限まで

パブリック OCI と違い、ラックの OCPU・メモリ・ストレージには物理的な上限があります。需要が上限を超えると、その場でオンデマンドに増やすことはできず、ラックの拡張・追加が必要です。容量計画を前提に設計してください。

セキュリティ

  • データと処理が自社施設内に留まるため、データ所在地・主権の要件を満たしやすい
  • 認証・認可は OCI テナンシ側の IAM ポリシー / コンパートメントで制御し、ラックへ同期されることと接続断時のキャッシュ動作を踏まえる
  • VM から OCI サービスへアクセスする際は鍵のハードコードを避け、インスタンスプリンシパル相当の仕組みを使う
  • ネットワークはプライベートサブネットNSG / セキュリティリスト相当で境界を制御し、現地セグメントとの通信を必要最小限にする
  • ハードウェアとファームウェアのパッチは Oracle が遠隔で適用するため、基盤の脆弱性対応が運用に組み込まれる
  • 物理セキュリティ(設置施設の入退室管理など)は顧客側の責任分界に含まれる点を、責任共有モデルとして押さえる
責任分界を取り違えない

ハードウェアの保守・パッチは Oracle が担いますが、設置施設の物理セキュリティ、VM 上の OS・アプリのパッチ、IAM 設計、ネットワーク境界は顧客の責任です。責任共有モデルを誤解すると、守れているつもりの穴が残ります。

関連サービス・比較

最も近い関連サービスは OCI Dedicated Region です。どちらも OCI を自社施設に持ち込む構成ですが、持ち込む範囲と規模が異なります。Compute Cloud@Customer はラック規模の IaaS、Dedicated Region は多数の OCI サービスを含むリージョンです。AWS では Outposts が近い選択肢です。

観点Compute Cloud@CustomerOCI Dedicated RegionAWS 対応
持ち込む範囲コンピュート中心の機能OCI フルリージョン相当Outposts / 専用領域
規模・設置条件ラック規模、拡張構成ありリージョン規模、DR25は3ラックからラック〜大規模
運用Oracle が遠隔管理Oracle が遠隔管理AWS が管理
操作体験OCI 互換のローカル APIOCI 互換のローカル APIAWS API 互換
主な用途データ所在地・低遅延の拠点規制下での包括的クラウドハイブリッド・現地処理
容量ラックの物理上限までリージョン規模で拡張設置容量まで

ハンズオン / CLI例

Compute Cloud@Customer の資源操作では、OCI CLI をラックのローカル・サービス・エンドポイントへ向けます。自己署名または組織 CA を使う環境では CA バンドルも指定します。まず読み取り操作で接続先と認証を確認してください。

# ローカルComputeエンドポイントで利用可能なシェイプを確認
oci compute shape list \
  --compartment-id "ocid1.compartment.oc1..xxxx" \
  --endpoint "https://iaas.<ccc-name>.<domain>" \
  --cert-bundle "/path/to/ccc-ca.pem" \
  --output table

# 同じローカルエンドポイントでVMを一覧表示
oci compute instance list \
  --compartment-id "ocid1.compartment.oc1..xxxx" \
  --endpoint "https://iaas.<ccc-name>.<domain>" \
  --cert-bundle "/path/to/ccc-ca.pem" \
  --query "data[].{Name:\"display-name\", State:\"lifecycle-state\", Shape:shape}" \
  --output table

OCI Service

Compute Cloud@Customerを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

コンピューティング

比較で見る軸

クラウド: OCI / カテゴリ: コンピューティング / 難易度: intermediate

導入後に効く点

資源操作はローカル、IAMの変更元と課金管理はOCIテナンシに置く。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
OCI
カテゴリ
コンピューティング
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
operational / security / reliability / performance

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「コンピューティング / operational」に近いか確認する。
  • 強みである「自社施設のOracle管理基盤で計算、ネットワーク、ストレージを使う。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

コンピューティングoperationalsecurityreliabilityperformance