Compute Cloud@Customer
OCI のコンピュート、ネットワーク、ストレージを自社データセンター内で稼働させ、データ所在地や低遅延の要件を満たすラック型 IaaS。基盤は Oracle が管理し、利用料は OCI の請求体系で扱う。
- 自社施設のOracle管理基盤で計算、ネットワーク、ストレージを使う。
- 資源操作はローカル、IAMの変更元と課金管理はOCIテナンシに置く。
- 接続断でもローカル運用は続くが、IAM同期とOracle運用は止まる。
解決する課題
クラウドの俊敏さは欲しいものの、データを自国・自社の外に出せない、あるいは現場設備との通信に低遅延が要る、という要件はクラウド移行の障壁になりがちです。Compute Cloud@Customer は、OCI のコンピュート基盤そのものを自社データセンター内のラックとして動かし、この対立を解消します。
- データ所在地(データレジデンシ)や規制で、データを自社施設の外に出せない
- 工場・店舗・拠点の設備と低遅延で通信したい(現地でデータ処理を完結させたい)
- 既存のオンプレ資産と同一ネットワーク内でクラウド的に動かしたい
- ハードウェアの調達・保守・パッチからは解放され、クラウドの運用体験を手元で得たい
- 接続が不安定な環境でも、ローカルでコンピュートを動かし続けたい
主要概念と用語
- Compute Cloud@Customer ラック: 自社データセンターに設置される、OCI のコンピュート・ストレージ・ネットワーク機能を内蔵したハードウェア。Oracle が所有・遠隔管理し、顧客は上で動くサービスを使う
- OCI Dedicated Region との違い: Dedicated Region は多数の OCI サービスを含むリージョンを顧客施設に構築する。Compute Cloud@Customer は、コンピュート、ネットワーク、ストレージを中心とするラック規模の IaaS
- ローカル管理面: VM、VCN、ストレージなどの作成・変更・削除を、Compute Cloud@Customer Console、対応する OCI CLI / API、Terraform からローカルに実行する
- テナンシ / コンパートメント / IAM: IAM リソースの変更元は OCI テナンシにあり、ラックへ同期・キャッシュされる。接続断中にローカルで IAM を変更することはできない
- シェイプ / VM: ラックの容量の範囲内で、フレキシブルシェイプ(OCPU・メモリ指定)の VM を起動する
- 遠隔管理(Oracle 運用): ハードウェアの監視・パッチ・ファームウェア更新は Oracle が遠隔で実施し、顧客はインフラ運用から解放される
仕様・制限・クォータ
- ラックは有限の物理容量(OCPU・メモリ・ストレージ)を持ち、起動できる VM 総量はその範囲に収まる。クラウドのように事実上無制限ではない点が最大の違い
- 提供されるのはコンピュート中心のサービス群で、パブリック OCI の全サービスがそのまま使えるわけではない。利用可能なサービスは提供仕様に従う
- 設置にはデータセンター側の前提条件(電力・冷却・物理スペース・ネットワーク接続)を満たす必要がある
- 容量を増やしたい場合は、原則としてラックの追加・拡張で対応する(クラウドのオンデマンド拡張とは性質が異なる)
- Oracle が遠隔管理するため、ハードウェアやコントロールプレーンの保守ウィンドウが伴う
- OCI テナンシとの常時接続が前提。短時間の断には耐えるが、接続断は障害として復旧し、IAM 同期や Oracle の監視・保守が止まる時間を最小化する
- 具体的な提供シェイプ・容量・対応リージョン・前提値は版や地域で変わるため、契約・公式ドキュメントで確認する
内部の仕組み
Compute Cloud@Customer は、OCI のコンピュート、ストレージ、ネットワークを顧客データセンター内の Oracle 管理基盤で提供します。クラウド資源のライフサイクル操作は、ローカルの Compute Cloud@Customer Console、対応する OCI CLI / API、Terraform が受け付けます。一方、ユーザー、グループ、動的グループ、ポリシーなどの IAM リソースは OCI テナンシで変更し、ラックへ同期・キャッシュします。この二つの管理面を同じものとして扱わないことが重要です。
データと処理は顧客施設内に留まるため、データ所在地要件を満たしつつ、現地設備と低遅延で通信できます。OCI テナンシとの接続が切れても、既存ワークロードに加え、ローカル管理面からの作成・変更・削除や OCPU 変更は継続できます。ただし、IAM の変更・同期、OCI 側からの基盤管理、Oracle の監視や自動保守は接続回復まで止まります。
Compute Cloud@Customer の価値は「OCI と同じ操作体験を、データを外に出さずに自社施設内で得られる」点にあります。パブリック OCI と同じ API・概念で扱える一方、容量はラックの物理上限に縛られる、という両面を理解しておくと設計を誤りません。
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設計パターン / ベストプラクティス
- ハイブリッド前提で設計する。機微データや低遅延処理はラックで、バースト需要やバックアップ・分析はパブリック OCI 側で受ける役割分担を考える
- ラックは有限容量なので、シェイプとワークロードの容量計画を前もって行い、ピークと余裕を見積もる
- IAM は OCI テナンシを変更元にし、同期対象と接続断中に実行できない変更を運用手順へ明記する
- VM・ブートボリュームのバックアップを計画し、災害対策としてパブリック OCI リージョンへの退避経路を用意する
- アプリはステートを外部化しておき、容量追加や保守時の移設・再配置に強い構成にする
- ネットワークは現地データセンターのセグメントと整合させ、必要な通信のみを許可する
運用・監視
- VM・ネットワーク・ストレージの作成や状態確認は、Compute Cloud@Customer Console / 対応する API・CLI・Terraform からローカルに行う
- メトリクスやログは OCI の Monitoring / Logging に相当する仕組みで取得し、容量使用率(残り OCPU・メモリ・ストレージ)を継続的に監視する
- ハードウェアとコントロールプレーンの保守・パッチは Oracle が遠隔で実施するため、顧客はワークロード側の運用に集中できる
- 容量が逼迫してきたら、VM の整理・配置見直し、またはラックの拡張・追加を検討する
- OCI への接続断中も、既存 VM とローカルの資源ライフサイクル操作は継続できる。反対に、IAM 同期と Oracle の監視・保守は停止するため、切断を定常運用にせず早期復旧する
コスト
Compute Cloud@Customer の料金は標準の OCI 請求構造でテナンシの請求へ計上されます。契約、導入構成、サービス利用量、コミットメントによって条件が変わるため、単純な「ラック全体の完全従量課金」と決めつけず、見積書と課金明細で確認します。ハードウェアの所有と基盤保守は Oracle 側です。
| コスト要素 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 契約・導入構成 | 基盤構成や契約上のコミットメント | 契約条件と見積書を確認 |
| サービス利用 | VM・ストレージなどの利用 | OCIテナンシの請求明細で追跡 |
| 運用負荷 | 監視・パッチ・故障対応 | Oracle の遠隔管理で自社負担を軽減 |
| 拠点展開 | 拠点ごとにラックを設置 | 現地処理で広域回線コストを抑制 |
パブリック OCI と違い、ラックの OCPU・メモリ・ストレージには物理的な上限があります。需要が上限を超えると、その場でオンデマンドに増やすことはできず、ラックの拡張・追加が必要です。容量計画を前提に設計してください。
セキュリティ
- データと処理が自社施設内に留まるため、データ所在地・主権の要件を満たしやすい
- 認証・認可は OCI テナンシ側の IAM ポリシー / コンパートメントで制御し、ラックへ同期されることと接続断時のキャッシュ動作を踏まえる
- VM から OCI サービスへアクセスする際は鍵のハードコードを避け、インスタンスプリンシパル相当の仕組みを使う
- ネットワークはプライベートサブネットと NSG / セキュリティリスト相当で境界を制御し、現地セグメントとの通信を必要最小限にする
- ハードウェアとファームウェアのパッチは Oracle が遠隔で適用するため、基盤の脆弱性対応が運用に組み込まれる
- 物理セキュリティ(設置施設の入退室管理など)は顧客側の責任分界に含まれる点を、責任共有モデルとして押さえる
ハードウェアの保守・パッチは Oracle が担いますが、設置施設の物理セキュリティ、VM 上の OS・アプリのパッチ、IAM 設計、ネットワーク境界は顧客の責任です。責任共有モデルを誤解すると、守れているつもりの穴が残ります。
関連サービス・比較
最も近い関連サービスは OCI Dedicated Region です。どちらも OCI を自社施設に持ち込む構成ですが、持ち込む範囲と規模が異なります。Compute Cloud@Customer はラック規模の IaaS、Dedicated Region は多数の OCI サービスを含むリージョンです。AWS では Outposts が近い選択肢です。
| 観点 | Compute Cloud@Customer | OCI Dedicated Region | AWS 対応 |
|---|---|---|---|
| 持ち込む範囲 | コンピュート中心の機能 | OCI フルリージョン相当 | Outposts / 専用領域 |
| 規模・設置条件 | ラック規模、拡張構成あり | リージョン規模、DR25は3ラックから | ラック〜大規模 |
| 運用 | Oracle が遠隔管理 | Oracle が遠隔管理 | AWS が管理 |
| 操作体験 | OCI 互換のローカル API | OCI 互換のローカル API | AWS API 互換 |
| 主な用途 | データ所在地・低遅延の拠点 | 規制下での包括的クラウド | ハイブリッド・現地処理 |
| 容量 | ラックの物理上限まで | リージョン規模で拡張 | 設置容量まで |
ハンズオン / CLI例
Compute Cloud@Customer の資源操作では、OCI CLI をラックのローカル・サービス・エンドポイントへ向けます。自己署名または組織 CA を使う環境では CA バンドルも指定します。まず読み取り操作で接続先と認証を確認してください。
# ローカルComputeエンドポイントで利用可能なシェイプを確認
oci compute shape list \
--compartment-id "ocid1.compartment.oc1..xxxx" \
--endpoint "https://iaas.<ccc-name>.<domain>" \
--cert-bundle "/path/to/ccc-ca.pem" \
--output table
# 同じローカルエンドポイントでVMを一覧表示
oci compute instance list \
--compartment-id "ocid1.compartment.oc1..xxxx" \
--endpoint "https://iaas.<ccc-name>.<domain>" \
--cert-bundle "/path/to/ccc-ca.pem" \
--query "data[].{Name:\"display-name\", State:\"lifecycle-state\", Shape:shape}" \
--output table
OCI Service
Compute Cloud@Customerを実務で読む
TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。
解決すること
コンピューティング
比較で見る軸
クラウド: OCI / カテゴリ: コンピューティング / 難易度: intermediate
導入後に効く点
資源操作はローカル、IAMの変更元と課金管理はOCIテナンシに置く。
先に潰すリスク
サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。
- クラウド
- OCI
- カテゴリ
- コンピューティング
- 難易度
- intermediate
- 関連資格
- —
- 設計柱
- operational / security / reliability / performance
判断チェックリスト
- 自社の用途が「コンピューティング / operational」に近いか確認する。
- 強みである「自社施設のOracle管理基盤で計算、ネットワーク、ストレージを使う。」が本当に評価軸になるか確認する。
- 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
- 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
- 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
- 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。